
仲秋の名月

どこかで月の明かりは死の光だと聞いたことがある。
太陽のように自らの生を燃す輝きではなく、
活動を停止した星の骸に反映された光だから、らしい。
月が死の星というのは当たってると思う。
月面にはレゴリス(隕石の塵やゴミ)に覆われた荒野が広がっており、
星の生を見出すことができないからだ。
死は私たちの頭上に煌々と浮かび、
彼女もまた私たちの生を見下ろしている。
その月のもたらす死の光に私たちは恐怖ではなく、
美しさを感じるのは奇妙だ。
どうして月光とは、かくも優しく綺麗なのだろう。
考えるに、我々が穢土に立つからこそ抱く感情なのかもしれない。
そう、月の光は浄化の光なのだ。
故に、人々を古来から惹きつけてやまないのだろう。

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