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雪と赤い服


今日はキリスト教のクリスマスとかいう祭りの日だ。
なんでも赤い服を身に着けた人間が中元の類を配るのだという。




私はあいにく仏教徒なので、
祭りに関係なく仕事へ向かう。
昨夜のうちに降ったのだろう。
道路は黒から白地へと塗り替えられていた。

雪国に住んでいるため、
町で出くわすドライバーは雪道の癖を熟知している。
そのため普段通りとはいかないが、
それなりのスピードを維持しながらの通勤が可能だ。
が、時折ペーパーだか、老人だかは知らないがその流れを乱す者がいる。

今日の場合はあの赤い軽自動車だ。
老い果てた犬のように地面をなめながら走行していた、私の目の前で。
加えて、
その時は一車線を進行中であり、
追い越そうにも追い越せない状況にあった。
こうなると不本意ながら予定が狂わされ、
遅刻の可能性が浮上する。
焦りは募り、時計と目を合わせる機会が増えていく。
そんなこちらの気も知らず、
赤い軽自動車はゆっくりと道路の白化粧を貪っている。
どうやらこのサンタは、
私に遅刻をプレゼントしたいらしい。



一日の職務を終え、帰路につく。
あたりに日の残香はなく、雪の燐光だけが道を照らしていた。
帰りは行きと違い時間に脅迫されないので気分が楽でいい。
・・・そういえば今朝は最悪だった。
もうあんなギフトはご免こうむりたい。

郊外から街中に入り自宅まで2,3分のところで、
奇妙な衣装を身にまとっている通行人がいた。
長靴と一部を除いて、赤で染まった服を着ており、
恰幅こそよくはなかったが、サンタがそこにいた。

恥じらいなどないのだろうか。
人が何を着ようが勝手であり、この考えは少々無粋であった。
しかし、お世辞にも似合っていなければ、
服が防寒の機能を成してるとも思えない。

・・・よく見てみると彼の手には包装紙に包まれた箱のようなものを
小脇に抱えている。
しかも彼は笑っていた。
彼は恥じらいなど微塵も感じてはいない。
彼の足取りは軽くしっかりと雪上を歩んでいた。

一年に一度のお祭りだもの。
クリスマスが民衆に広まった理由がわかった気がする。
そう思うと途端にほほえましく感じた。
太っ腹なんだなぁ。サンタは。

柄じゃないけど、
ケーキ屋にでもよっていこうかなぁ。

心の声を脳からの指令と勘違いし、
腕はハンドルをケーキ屋へと向けるのだった。



サンタ
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